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沖縄の空手の達人に言われた強くなる方法
空手が強くなる方法はヤクザか軍人になる
「本当に空手が強くなりたかったら、ヤクザか軍人にでもなるしかないさ。」
俺の空手の師匠の師匠の言葉だった。
俺の学んでいた空手は、古い昔の空手で沖縄では 「手(てぃ)」と呼ばれているモノだ。
高校生の時にこの「手」に出会い、惚れ込み、今までやっていた空手は捨てて師匠に師事した。
その師匠の師匠に沖縄まではるばる会いに行って修行した時の話だ。
そして19歳の俺には空手が強くなる事と、ヤクザや軍人がどう繋がっているのかよくわからなかった。
当時は試合や組手で勝てるようにと、またはプロ格闘家になれるように練習や鍛錬をするのが強くなるというイメージだったからだ。
それでも師の言葉を飲み込み
「ヤクザか軍人か〜。傭兵にでもなろうかな〜」
なんて思っていると、
次の言葉、
「でも、もしヤクザか軍人になったらお父さんとお母さんはとっても悲しむさ〜。」
「・・・。」
「じゃあどうやって強くなればいいんだ?!」
と内面の俺がざわつく。
結局ヤクザにも軍人にもならなかった俺だけど、お父さんとお母さんは少し悲しませてるかもな〜(苦笑)
平和な日本にもう空手は必要ない⁉︎
「君はなんで空手なんかやるかね?」
こんなことも聞かれた。
当時武道の雑誌や本、マンガなどの影響から漠然と武術の達人のお爺さんに魅力を感じていた俺は
「老人になるまで空手を続けて極めたいです!」
と答えた。
すると
「今の世の中に空手なんて時代遅れ、必要ないさね」
「⁉︎」
また内面の俺がざわつく。
「今時なにかあってもすぐに警察が飛んで来るさ。」
正直当時の俺にはあまりピンと来ず、心がざわつくだけだった。
今は多少理解できるので解説すると、今の日本は平和なので戦いや護身の術が必要なくなった。
警察機構がよく機能して治安が良く、自衛隊は戦争をせず、ヤクザは法律によって押さえ込まれている世の中に、個人の護身や戦いのための空手は必要ないってことだと思う。
空手の修行が進み理解が深まりタイムスリップしたくなる
沖縄の武士たちに襲いかかる様々な困難に思いを馳せる
空手の修行が進むと、この空手をバリバリ使っていた時代の人達がどんな環境に置かれていたのか想像するようになる。
古くは沖縄の戦国時代、薩摩藩に支配を受けて武器の所持を禁止されていた琉球王国時代、そして師匠の師匠が空手でサバイブした米軍統治時代。
特に終戦から沖縄返還くらいまでは、凄まじかったと思う。
- アメリカの占領による米軍人と沖縄の人々の対立。
- 庶民は貧しい為、スリ、ひったくり、略奪などの治安の悪化。
- 闇市などの利権抗争。
- 沖縄ヤクザ同士の戦争(縄張り争い)
上記のように色々と考えられるが、残念なことに俺は想像力が乏しく当時のことがリアルにイメージ出来なかった。
しかし今は便利な時代。
「治安の悪い国」とネットで検索するとブワッと色々な情報が出てくる。
「内戦中の国」や「殺人事件の多い国ランキング」などなど興味深い情報を読み漁った。
また仕事の先輩から「メキシコの麻薬カルテル」の話を小耳に挟んだりしてるうちに、
「もしこれらの国に行けば、まるで当時の沖縄にタイムスリップしたかのような体験ができるんじゃないか?!」
とワクワクしながら妄想するようになった。
そして更にそれが、将来自分のやりたい事になっていった。
ヤクザと軍人の共通点
沖縄の人にとって戦後から沖縄返還までくらいのあいだ、空手のイメージはすこぶる悪かったらしい。
なぜなら当時は空手をやるのはヤクザ者と相場が決まっていたからだ。
またこの頃の沖縄はベトナム戦争の最前線基地だった為、実戦派の空手家の道場には多くのアメリカ軍の軍人が空手を習いに来ていたという。
ベトナム戦争に行った米軍人の10人に6人は死亡または重傷者になったというから、これから戦地へ赴こうとする彼らは、尋常じゃないマインドだったと思う。
「本当に空手が強くなりたかったらヤクザか軍人になるしかない。」
この言葉の中のヤクザと軍人には共通点がある。
それは両者とも常に戦闘の中で「命」を落とすリスクを負っている点だ。
また「死」がより身近にある。
そして己自身も人の命を奪う覚悟が必要であるという点だ。
自分にとって最も大切な命がかかっている。
そんな環境下だったからこそ彼らは人一倍稽古に励んだろうし、藁にもすがる想いで教えを受けていたと思う。
そして必然的に実践経験は豊富になり戦闘に対する知恵が付く。
こうしてマインドと環境が相互に循環して空手が強くなっていく訳だ。
「命」を落とすリスクを負った旅がしたい。
正直平和ボケした俺には、人の命を奪う覚悟は無い。
もし人を殺してしまったら、俺自身辛いし、殺された人の家族や仲間も悲しむだろうし、俺の家族や友人も悲しませることになるからだ。
だが「命」を落とすリスクはどうだろう。
そのリスクを負って危険な都市を旅して無事に乗り越えれば、空手が強くなるためのマインドや環境、知恵の半分ぐらいは手に入るんじゃないだろうかと考えた。
沖縄の「手」の達人の言葉は、俺にこの様な目的を持たせてくれるきっかけを与えてくれた。